1月15日はマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの誕生日。1964年、ノーベル平和賞受賞直前、ロンドンで行った講演(Democracy Now!の2015年1月19日の番組から)を訳してみました。(by 大竹秀子)
このとき、キングは35歳。1955年に26歳の若さでモンゴメリーのバスボイコット運動の中心的指導者となり全米に名を知られるようになってからづすでに10年近くがたっていました。演説でキングは、「運動は本当に成果があるのか」という人々の胸をよぎる痛切な問いに答えます。ヤワと思われがちの「非暴力」ですが、万一、命を落とすはめになっても命をかけるだけのものをもてたことをかみしめようと覚悟を語っています。また、イエスが「汝の敵を愛せ」とはいったけれど、「敵を好きになれ」とはいわなかったのは、ありがたい。どうしたって好きになるのが無理な相手はいる。でもここでいう「愛」はそんじょそこらの愛とは違うんだともいっています。
ロンドンでの講演で外国人が相手だったためもあり、アメリカの黒人の歴史をかいつまんで説明してくれているのはありがたいし、当時、投獄の身だったネルソン・マンデラなどを指導者とする南アフリカの反アパルトヘイト運動に敬意を表し、不買運動・投資撤退運動を通しての国際的連帯を強く呼びかけているのも特徴です。また、平和と民主主義を求めるならば、移民たちを温かく迎え、同じ人間としてわけへだてなく扱え、社会の中に経済的・心理的に疎外された層を生み出すことは社会の安全を大きな危険にさらすと説いていることもいまに通じる慧眼です。
公民権運動で世界的に有名なキングですが、反戦・反貧困の闘士でもありました。1967年には反戦演説「ベトナムを越えて・沈黙を守るとき」をおこなって、ついていけないそれまでの支持者から総すかんを食い、この演説から3年もたたぬ1968年4月に暗殺されました。
世紀の演説上手だったキング。Democracy Now!の番組を通して、その演説を声でも聴けますし、番組の休憩時間に、”King of Love Is Dead”を歌うニーナ・シモンのクリップも使われていますので、合わせてお楽しみください。(動画と英語スクリプトはここから)