1971年9月13日、非人間的な扱いに抗議して起きたアッティカ刑務所蜂起を鎮圧し、刑務官を含む39人を死にいたらしめた当日の、ニューヨーク州知事ネルソン・ロックフェラーとリチャード・ニクソン大統領との電話でのやりとりの録音テープが発見されました。「殺された囚人は、全員、黒人だったのかい?白人も少しはいたのかね?」とニクソンは聞きます。このテープの一部を報道したデモクラシー・ナウ!の番組「アッティカ刑務所の反乱から40年 新発見テープが示す犠牲者多数の鎮圧を賞賛したニクソンとロックフェラー」を全訳しました。司会はエイミー・グッドマンとフアン・ゴンザレスです。(翻訳:大竹秀子)
フアン・ゴンザレス: 40年前の今週、ニューヨーク州北部のアッティカ刑務所で、非人間的な扱いに抗議した囚人たちの蜂起はニューヨーク州の攻撃により終わりを告げました。武器を持たない囚人達は、4日間にわたり39人の刑務官を人質にしました。9月13日、ネルソン・ロックフェラー ニューヨーク州知事は、武装した州警察官に反乱の鎮圧を命じました。州警察は、2000発以上を無差別に発射しました。39人の死者のうち、29名が囚人、10人が刑務官でした。銃撃終了後、警察は数十人の囚人を殴り、拷問にかけました。
エイミー・グッドマン: 襲撃の日のリチャード・ニクソン大統領とロックフェラー ニューヨーク州知事との電話での会話を録音したテープが、発見されました。テープは大統領が暴力的な作戦を熱狂的に支持したことを明らかにしています。ロックフェラーは大統領に、攻撃前の想定では300人を超える囚人が殺害される可能性もあったのだが敢えて作戦を決行したとうちあけています。マンチェスターのニューハンプシャー大学の歴史学者、テレサ・リンチがこのテープを発見しました。
交換手: ロックフェラー知事につながっています。
リチャード・ニクソン大統領:もしもし。
交換手: どうぞ、お話しください。
ネルソン・ロックフェラー知事: 大統領殿。
大統領: 大変な一日だったね。だが、私がきみを全面的に支持していることを知ってほしい。ボブ・ハルデマンから話は聞いていたが、閣議があったものだから電話に出られなかった。その後、実業界のリーダーたちとの会合があり、いまようやく終わったところだ。だが、きみが見せた勇気と恩赦を与えないという判断は正しかった。新聞が何を書こうが、誰が何を言おうが、私は気にしない。何と言われようがかまわない。ほかにやりようはなかったと思う。この件で恩赦を与えたりしたら、全米各地の刑務所で騒動を起こすだけだからな。
知事: おっしゃる通りです。
大統領:きみは正しかった。撃たれた人には気の毒したし、悲劇だとは思うが、私の見解はいまいった通りだ。ワシントンの州警察にも、全面的に支持するよう話したところだ。
知事:ありがとうございます。先にお電話したのは、我々がやろうとしていたことを事前にご報告したかっただけです。
大統領: なるほど。
知事: 突入した時には、人質39人が全員殺されるかもしれなかったし、囚人が2~300人死ぬ可能性もありました。
ゴンザレス: 録音テープの中で、ニクソン大統領は、刑務所の反乱は「基本的に黒人の事件」だと、蜂起の人種的構成について述べています。ニクソンは、弾圧の犠牲者は全員がアフリカ系アメリカ人だと述べていますがこれは事実に反しており、実際には蜂起当時、アッティカ内の指導層は多人種であったことを軽視しました。
大統領: きみが対処している相手は、主に黒人なんだろう?
知事: ええ、そうです。事件全体でリーダーは黒人でした。
大統領: とんでもないことだ。殺された囚人は、全員、黒人だったのかね?白人も少しはいたのかい?
知事: まだ報告が届いていませんが—白人もいたと思われます。
大統領: そうか。
知事: しかし、それは囚人が刑務官を殺そうとしたために起きたことでした。囚人が刑務官を捕まえようとして、警察側を襲撃した時に起きました。
大統領: やむをえなかったわけだ。
2011年9月9日、アッティカ刑務所蜂起40周年を記念したニューヨークのリバーサイド教会でのイベント,
"Attica Is All of Us" (我々皆のアッティカ)に出席した、元囚人たち(photo: ©Tony Grier)
知事: ですが、我々は独房棟を、一発も銃撃せず取り戻しました。州警察に負傷者はいません。ひとりだけ、足を撃たれましたが。しかし─
大統領: 警察の負傷者はたった一人?
知事: おっしゃる通りです。
大統領: すばらしい。
知事: 実にみごとな作戦でした。
グッドマン: 新たに発見された録音テープからでした。アッティカ蜂起の日に電話でニューヨーク州知事ネルソン・ロックフェラー氏と話すリチャード・ニクソン大統領でした。
アッティカに関するニクソンとロックフェラーの対話を録音したテープを同僚のスコット・クリスチャンソンさんと一緒に入手して公開し、デモクラシー・ナウ!にも共有してくださった、マンチェスターのニューハンプシャー大学の歴史学者テレサ・リンチさんに話を聞きます。
ニクソン米大統領と当時ニューヨーク州知事だったロックフェラー氏が刑務官を襲撃する囚人について語っていますが、その後判明したように、実際には、刑務官を殺したのは囚人ではありませんでした。1971年9月13日、囚人と刑務官、39人全員の命を奪ったのは、州警察の襲撃でした。テレサ・リンチさん、このテープがもつ意義、そしてどのようにして発見したのか、聞かせてください。
テレサ・リンチ: テープは、ニクソンが公的にも、またホワイトハウス内でもロックフェラーを進んで支援しようとしたことをあきらかにしています。2004年にメリーランドの米国国立公文書館から入手しました。ニクソンとロックフェラーが、憶測をたくましくしたようすも明らかですし、さらに広い意味では、2人が犯罪に対していかに力み、タフであるかを示そうとしている様子もわかります。政治と権力とが接する場面をかいまみせていると思います。
グッドマン: 同じテープの別の箇所もお聴きください。ニクソンとロックフェラーが、アッティカのメディア報道をどう管理しようか、話し合っています。ニューヨークタイムズ紙の元政治記者/コラムニストのトム・ウィッカーの名があがります。
大統領: トム・ウィッカーはこの件についてどう動いているんだい?
知事: 信じられん話ですが、囚人が招集した市民委員会がありまして、委員の数は32人です。トム・ウィッカーも委員の一人です。クンスラーも入っています。例の弁護士です。
大統領: ああ、名前は聞いている。
知事:マウマウの首領までいます。ごたまぜの連中です。
大統領: そうか。
知事: まともな人もはいっています。国会議員だとか。トム・ウィッカーはこの件では、大変感情的になってましてね。
大統領: ふうむ。
知事: —あきれた話ですが。
大統領: どっちの側なんだ?
知事: あっち側です。
大統領: ま、いつものことだが。なるほど、なるほど。
知事: 昨日は、現場に出向くよう、一日中、圧力をかけられましてね。すべての手が尽きたからというんです。
大統領: 現場に行ったのかね?
知事: もちろん、行きやしません。行ったりしませんよ。
大統領: もちろん、そうだよな。
知事: しかし委員会の連中と電話で話さないわけにはいきませんでした。ウィッカーやその他の連中です。
大統領: そうか。
知事: こう言ってやりました。「わかった。現場に行こう。だが、恩赦を与えるわけにはいかないぞ」。「あなたが中庭の中まで来るなら、人質を釈放しよう」と、こうです。
大統領: なるほど。
知事;まったく。
大統領: なるほど。
知事:連中の前に連れだそうっていうんです。—
大統領: ウィッカーは恩赦を勧めたのか?
知事;その通りです。
大統領: まったくもう!
知事: なんというか—[乱暴者の]ヤギと[柔和な]羊との違いですな。
ゴンザレス: トム・ウィッカー記者について語るロックフェラー知事とニクソン大統領でした。このテープを発見した時期について質問です。ニクソンのテープはどんどん出てきているようですね。正確にどこでこのテープを発見したのですか、これまで誰も気づかなかったのですか?もうひとつの質問は、アッティカ体験によってネルソン・ロックフェラーはどのように変わったか?穏健派の共和党とみられており、共和党にはロックフェラー共和党派までありましたが、この事件で彼はどう変わり、その歴史的位置づけが究極的にどう変わりましたか?
リンチ: ある意味でロックフェラーを変えたと思います。人によっては、これを彼の手柄とみましたが、他の人にとっては─なんというか─ごめんなさい。この質問は考えていませんでした。でも─
グッドマン: テープの別の部分を聴きましょう。ニクソンがアッティカは抑止力の役割を果たすと思っていたことを明らかにする部分です。ここでは、ニクソンは、顧問で国内問題に関する大統領補佐官だったジョン・アーリックマンと話しています。ニクソンはブラックパンサー党がアッティカ後に報復攻撃をしかけてくるという考えを鼻であしらっています。
大統領: きみは、連邦刑務所は予防措置を執るべきだと思うかね?
ジョン・アーリックマン: 検事総長を通して刑務所にはすでに警告を発してあります。ですから、どこもいわばいまは非常態勢にあります。
大統領: ニューヨークで起きたことは、暴動を煽るというよりは、むしろその逆の効果をあげる気がするな。
アーリックマン: 抑止効果ですね。ロックフェラーが気にしていたのは、たまたまやって来ていた[ボビー・]シールやブラックパンサー党の連中が姿を現して、報道陣に向かって「囚人達が万一、傷つけられるようなことがあったら、全国各地のほかの刑務所を爆破する」と発言したことでした。
大統領: なるほど。けさ、ロックフェラーから聞いた話だね。
アーリックマン: そうです。
大統領: なるほど。
アーリックマン: ですから、その話を検事総長に伝え、検事総長は補佐官に警告を発しました。
大統領: 連中は、そんなことはやらんだろう。私が間違っているかもしれないが、しかしロックフェラーはやるべきことをやったと思う。
グッドマン:ジョン・アーリックマン補佐官と話すニクソン大統領でした。テレサ・リンチ教授、最後に一言。このテープからあなたが発見したことは?
リンチ:このテープは今でも多くのアメリカ人の心に触れると思います。 人種と階級、権力の問題が、溶け合っています。ニクソン時代のホワイトハウスの内実をかいまみせてくれると思います。
グッドマン: ありがとうございました。テレサ・リンチさんはマンチェスターのニューハンプシャー大学の歴史学者で、同僚のスコット・クリスチャンソンさんと一緒に、アッティカに関するニクソンとロックフェラーの対話の録音テープを手に入れました。
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